設立趣意



 日本政治史上、初の本格的政権交代が実現し、新政権は「友愛」や「新しい公共」という優れた理念を政権の考え方(公共哲学)として掲げた。この政治的大転換は、明治維新直後の大変革の開始にたとえられるであろう。これは、単に政権交代の実現にとどまらず、古い政治的枠組みを超えて、「友愛公共」の理念のもとで、21世紀における新しい政治を切り開く可能性を持つからである。

 「友愛」とは、西洋においてはギリシャ以来の思想史的背景を持ち、近代フランス革命のバックボーンになった。これは、人類の様々な倫理の中核たる「愛」の一つの形態であり、政治的コミュニティを支える絆の役割を果たす。

 私たちの言う「新しい公共」とは、日本では「公」がしばしば国家や官僚のことを表してきたのに対し、人々が「共」に自発的に議論し形成して実現する「公共」を表す。これは「民の公共」と呼びうる価値理念であり、国家や官僚のあり方は、この「公共」に基づいて再構成され、運営されなければならないのである。

 このような「友愛公共」の理念に基づいて、根本的変革が行われることは、日本政治の進展のために決定的に重要である。旧来の政治に退却することは時代の逆行そのものであり、これらの理念は新政権の命運を超えて日本政治に実現してゆかなければならない。

 しかし、残念ながら、マス・メディアやそこに登場する評論家・学者などの相当部分は、自民党政権時代の古い考え方に囚われ、的外れの論評を行っている。政治的理念や政策的展開について十分な論評がなされず、政局や党派的対立に焦点を当てているのである。思うに、従来は、自民党政権の政治が余りにも旧態依然たるものだったので、政治批評が容易であった。ところが、政権交代によって最先端の思想的・学問的な理念を踏まえた政権が成立したために、その理念や政策を論評することが困難になってしまっているという事態が生じているのである。

  そこで、私たちは、思想的・学問的な観点も踏まえて、この新しい試みが様々な政策領域において重要な意義を持つことを明らかにし、それを巡る最新の議論を公共的世界に提示し、良質の公論を喚起したいと思う。友愛や公共といった理念に即して、政策に関して、内在的な議論・提案・批判ないし批評を行う「公共の場」を形成し、それを公開することによって、友愛政治の健全な進展に寄与したい。

 ある意味では、これは、従来の議会政治、官僚制度、アカデミズムや、マス・メディアなどの公共圏が十分な機能を果たしていないことを憂えて、友愛や公共という理念を中軸にした良質の公共圏を形成して公論を発展させる試みである。これが、「友愛公共」の理念のもとで、日本の政治文化の飛躍的展開に貢献することを祈る次第である。

※2010年6月に鳩山政権から菅政権への移行が生じたので、冒頭の第1文の文末を『掲げている』から『掲げた』と改訂した。(2010年7月1日)



       2010年2月12日   

発起人(50音順)

  池本 修悟 (NPO法人創造支援工房フェイス代表理事)
  稲垣 久和 (東京基督教大学教授)
  井上 英之 (ソーシャルベンチャー・パートナーズ東京代表)
  今村 久美 (NPO法人カタリバ代表理事)
  大久保 和孝(新日本監査法人パートナー)
  賀川 督明 (賀川記念館館長)
  金子 郁容 (慶應義塾大学大学院教授)
  加山 久夫 (賀川豊彦記念松沢資料館館長)
  木戸 寛孝 (世界連邦運動協会理事)
  鬼頭秀一   (東京大学教授)
  倉阪 秀史 (千葉大学教授)
  小林 正弥 (千葉大学教授)
  駒崎 弘樹 (NPO法人フローレンス代表)
  境田 正樹 (弁護士)
  佐藤 大吾 (NPO法人 チャリティ・プラットフォーム理事長)
  庄司 真理子(敬愛大学教授)
  鈴木 寛  (文部科学副大臣 参議院議員)
  土屋 了介 (国立がんセンター院長)
  橋口 寛  (橋口寛事務所代表)
  伴 武澄  (財団法人国際平和協会会長)
  平田 オリザ(劇作家)
  広井 良典 (千葉大学教授)
  福山 哲郎 (外務副大臣 参議院議員)
  古田 秘馬 (丸の内朝大学総合プロデューサー)
  松井 孝治 (内閣官房副長官 参議院議員)
  山脇 直司 (東京大学大学院教授)

賛同人(50音順)
  阿久根 武志(世界連邦協会 事務局次長)
  浅海 誠(青年海外協力隊 隊員)
  池田 秀一(SUN's ACT アドバイザリースタッフ)
  伊藤 未希(株式会社AforL)
  岩本 洋太郎(日産自動車株式会社)
  上村 雄彦(横浜市立大学准教授)
  大橋 直輝(株式会社マーレフィルターシステムズ)
  桂 正典(Shape Your Vision 代表)
  亀井 亮(株式会社ネクスト)
  九門 崇(東京大学 非常勤特任研究員)
  小林 典子(株式会社日本MSセンター)
  谷本 真邦(国連の友Asia-Pacificプロジェクト推進委員会委員)
  成田 好孝(アカシック株式会社 代表取締役)
  西部 沙織里(株式会社博報堂)
  野田 武志(有限会社オール・アズ・ワン 代表取締役)
  深井 慈子(南山大学教授)
  寶槻 康伸(株式会社ワイズポケット 代表取締役)
  増澤 由佳(日興グローバルラップ株式会社)
  松田 創(世界連邦21世紀フォーラム 事務局長)
  南 和行(日本医科大学 臨床心理士)
  森田 浩行(有限会社オール・アズ・ワン)
  山口 俊明(日本アイ・ビー・エム・サービス株式会社)
  山ア 勝久(株式会社TMC代表取締役社長)